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​最低限おさえたい発音 - その1

【発音学習のポイント】

多忙なビジネスパースンが目指すべき発音は
「相手に一度で分かってもらえる発音」である。

そのためにはまずは以下の二つをおさえること。

1.日本人にとって聞き分けにくい音(=発音しにくい音)の違いを知っている。

2.これらの音を注意さえすれば自分でも、少なくともかなり似せて
発音できる。 (「ネイティブみたいに」きれいな発音である必要はない。)

★この二つは表裏一体の関係である。

注意深く発音すれば自分でもある程度は似せて発音できないと
人が発音するその音を耳にしたときに聴きとれない。その意味で、基本的な発音のトレーニングは2重に大切である。

 

あなたが実際に話す場面では、発音にそこまで気を配っていられないので多少の日本語訛りは気にすることはない。一人で発音だけに集中して練習するときは、「そこそこ似た音が出せる」まで練習したい。

 

「マネできる」ということは頭の中にその音の正しい形が描けていることだからだ。それが「聴きとれる」ことにつながるし、発音のせいで相手に通じなかった時に自己チェックが出来ることにもつながる。

このページでは似た母音・似た子音の違いを把握する。
 

  最低限おさえたい発音[1]: 似ている母音の区別 (1)
 

[1] [æ] と[ʌ] の区別: staff と stuff

まずは、似て異なる2つの「ア」を学ぼう。

この2つとは [æ] と[ʌ] だ。

日本語の「ア」に聞こえる英語の母音は幾つかあるが
この [æ] と [ʌ] を日本語の「ア」で間に合わせてしまうと人を混乱させやすい。


そして、この二つを取り違えると、 結構赤面ものの間違いとなるパターンがなぜか多い。

発音のコツ

[æ] 日本語の「エ」を発音。少し口を横に広げ気味にキープ。
そのまま「ア」を発音する。そして喉の奥から、少し長めに発音する。


その感覚を体で覚えたら、今度は最初から
「口を横に広げ気味のエ」と「ア」を同時に出すつもりで発音。

母音の部分をあえてカナ表記すれば bad は、「バッd」ではなく「ベエアッd」。


hat は「ハッt」でなく「ヘアッt」である。


「エ」と「ア」の同時発音を忘れないこと。

ややエグイ音だ。エグさの度合いは人によって違う。

bad といったつもりが「バッd」では、
ビールのバドワイザー(Budweiser を "Bud"と縮める)になってしまう。

He's a bad guy. (あいつ悪い奴だ。)と言ったつもりが
He's a Bud guy. (彼はバドが好き。)と、バーでの会話に早代わり。

この程度の間違いは「結構赤面もの」のうちには入らないが...

では、中学で習った cat, hat, bad, cap という単語を例にとって、
2人のアメリカ人の[æ]発音を聞いてみよう。

ポーズがあるので自分でも真似してみよう。

発音の要領を忘れずに。
「口を横に広げ気味のエ」と「ア」の同時発音+喉の奥から、少し長めに発音。

「 cat → ケアッt hat → ヘアッt 
bad → ベエアッd cap → ケアッp 」

00:00 / 00:11
00:00 / 00:10

次は [ʌ] だ。

[ʌ] はとりあえず日本語の「ア」で代用して構わない。
それで通じるし、リスニングの場合もその認識でも困らない。

次の二つの語の母音を聞き比べてどちらが [æ] [ʌ] か判断してみよう。

00:00 / 00:05

​もう一人の例。

00:00 / 00:04

女性のほうは stuff, staff の順。

男性は staff, stuff の順だ。

「エ」が混ざることで、「エグさ」が加わったものが [æ] だと覚えてよう。

では、上の音声を再度プレイして、あとについて自分で発音してみよう。


この二つの単語の意味と使用例は下記の通り。
しばらく練習したら、次の項に進もう。

staff 〈集合的に〉(特定の部署の)スタッフ、職員、部員、社員
"sales staff" は営業部員全体。個人的に表す場合は、
"a member of our sales staff " となる。
"a staff of around 300"と言えば「約300名の要員・職員」。

stuff


1. [名詞」[口語] 物、代物、物事、事柄 ← "thing" をカジュアルに言うときに非常に頻繁に使われる。

He knows all kinds of weird stuff about beer.
彼はビールに関するありとあらゆる奇妙なことを知っている。

What did you do with my stuff?! 俺のモノをどうしたんだ?!
(「見当たらない、捨てたんじゃないだろな?」みたいなノリ)

 

2. [動詞]~に詰め込む、詰める、詰め物をする; ガツガツ食べさせる

I'm stuffed. おなかが(がつがつ食べて詰まって)いっぱいです。

 


【聞き比べ】

では、同様に幾つかのペアで [æ] [ʌ] を聞く。
最初の単語が [ʌ] の音、2番目が[æ]の音だ。

まず一回目は母音の違いに特に耳を傾けることに集中。
単語の意味の違いも同時に考えていると音に全身で集中できない。

2回目以降は、似て聞こえるこれらのペアの意味も考えてみよう。
勘違いしているものがあるかもしれない。
自明のものをのぞいて、各語の意味と例文を下に記した。

00:00 / 00:58

[単語と意味・例文]

buck-back

buck [名詞][米口語] 1 ドル

luck-lack

truck-track

truck トラック、台車

track [名詞] 小道、(スポーツ競技の走路の)トラック、(思考や行動の)流れ、(職業の)キャリア・パス、(工場の)組み立てライン

He has a proven track record. 彼は折り紙つきの(仕事上の)実績がある。

[他動詞](輸送中の荷物や郵便の状況を)追跡する、(進行や発展を)追っていく。

Can I track the shipment of my item online?
私の(注文した)品物の配送状況をオンラインで追跡できますか?

flush-flash

flush [名詞] 赤面、(水や感情の)ほとばしり、

[動詞] 赤面する、赤面させる、(ドッと)水をかけて流す

flush the toilet トイレを流す

flash [名詞] Adobe社のフラッシュ技術、フラッシュプレイヤー等。
カメラのフラッシュ、閃光、ちらりと見ること、一瞥

Some Android phones don't support Flash.
アンドロイド(OS搭載の)携帯の一部はフラッシュをサポートしない。

[動詞] (ランプなどが)点滅する、ピカッと光る、サッと見せる、
ちらりと見せる、(顔が)パッと赤くなる

crush-crash

crush [動詞] 押しつぶす、粉々にする、ぺちゃんこにする、~に圧勝する

[名詞] [口語] 心のときめき、片思い

have a crush on~ 誰々に片思いしている、ときめいている


He was her high school crush. 彼は彼女が高校のときの片思いの相手だった。

crash [動詞] コンピューターがクラッシュする、(大きな音を立てて)衝突する、(航空機が)墜落する、(事業などが)崩壊する、(パーティーなどに)強引に押しかける

My computer crashed again. また私のコンピュータがクラッシュした。


He's a party crasher. 彼は人のパーティに(呼ばれもしないのに)押しかけるやつだ。

drug-drag

drug ドラッグ、薬物

drag [名詞] 妨げ、足手まとい;[口語] 退屈なもの、うんざりするもの;
[スラング](男性の)女装、ドラッグクイーン

What a drag ! まったくウンザリさせられる!

lust-last

lust [名詞] 強い欲望、情欲; [自動詞](富・権力などを)渇望する;
(異性に対し)強い色情を抱く


●オフィスで lust を使う状況はフツー考えられないが、うっかり
the lust meeting (情欲会議)などと言うと、そういう言い方自体は
ないけれでも、 なんかとってもアヤシイ感じだ。


これを言っちゃう人がいる。 the last thing I want to discuss
(「最後に討論したい件」、あるいは 「それだけは討論を避けたい件」 )を
the lust thing I want to discuss ( 「討論したい例のエッチな件」 )などと
言ってしまうと、もう自分でフォローも難しい。ミスに気づいたら自分で笑い飛ばすのが一番かも知れない。

run-ran

fun-fan

fan [名詞] ファン(「熱狂的支持者」の意味のファン);(扇風機などの)ファン


fucks-fax

ネイティブに頼むのに気が引けたので音声はないが fax のa の発音を [ʌ]に変えてしまうとこれまたオフィスでドッキリさせてしまうだろう。

今度は、この一連の語を母音に注意して自分で発音してみよう。
今、いちばん大切なことは、あなたの意識の中で、この二つの「ア」をはっきりと区別、発音するときも区別することだ。

buck-back, luck-lack, truck-track, flush-flash, crush-crash, drug-drag,
lust-last, run-ran, fun-fan

00:00 / 00:58

では、練習した単語をランダムに並べるので、聞きながら書き出してみよう。
「エ」が混ざることで、「エグさ」が加わったものが [æ] である。
聞き取りが怪しければ、ポーズしたり繰り返したりしよう。

00:00 / 01:04

[答え]


fan, lack, drug, truck, track, crash, lust, flush, staff,
buck, back, fun, drag, luck, stuff, crush, last, run, ran

もし現時点で あなたの聞き分け率が低くてもあまり気にする必要はない。

訓練方法としては、文字を見ながら、サンプル音声の前に自分で発音してみて
サンプル音声と比べる方法も役立つので試して欲しい。

ここで最重要なのは...

(1) 違いがあることを認識した。
(2) 自分では区別して発音できるようになった。
(3) この2つの母音の違いで、どのような違う意味の単語があるのか確認した。という3点だ。

この二つの母音の違いで、まったく意味が違うことがあるという意識をもてた時点で、あなたのリスニングはもう前進している。

何よりも、あなた自身が、「似せよう」と努力して自分で声を出して練習したことでこの二つの音の違いが、もはや「気づかない雑音」ではなくなっているという点だ。

そうすると、 現実の会話でも音に対するアンテナが鋭くなるので
次第に他者の発音を聞き分ける能力があとからついてくる。


「どちらかな?」という今までは思いつきもしなかった疑問も出てくる。
文脈から推測できる場合も多いし、どうしても必要なら相手に確認することも可能だ。

もう一つ挑戦してみよう。今度は男性の読みだ。

00:00 / 00:57

[答え]


stuff, back, luck, fun, run, drag, last, crush, lack
lust, crash, flash, ran, truck, track, staff, buck, fan

★★超大切でしかも聞き分けにくいペア★★

[æ] と [ʌ] のペアではないのだが、

とりちがえると大きな混乱を招く大切なペアをひとつここでカバーする。

can と can't の違いだ。

can は、「できます!」ということを特に強調する場合以外は
母音が相当弱くなる。発音記号にすれば、とりあえずは[kən]というところ。
母音がさらに弱くなり [kn] といった音になることもある。

一方、can't は、母音は強く長め、そして語尾の破裂音 T が聞こえないことが多い。


つまり can't が「キャーン」と聞こえる。

まずは、can と can't が、はっきり区別できる例を聞こう。

00:00 / 00:11

I can work on that.
I can't work on that.

の順で女性と男性が発話している。

では、can と can't の区別が、より難しい例。

00:00 / 00:10

これも

I can work on that.
I can't work on that.

の順で女性と男性が発話しているが、特に男性のほうのは区別しにくい。

can は [kn]に近いような母音の非常に弱い音。
can't のほうが、やや母音が強い程度の違いだ。

この聞き違いは、ビジネス場面では重大なすれ違いに至りかねないので注意が必要。少しでも怪しければ、"You cAn or you cAn'T ?"と聞いて、確認したほうがいい。実は英語ネイティブでもそうしている。

 

[2] [ɔ:] と[ou] の区別 - bald と bold

まずはこのペアをしっかり聞き比べてみよう。
どっちの意味が何だったか即座に言えるだろうか?

00:00 / 00:07

最初は[ɔ:] が母音の bald 「はげ頭の、(山などに)木がない」。
2番目は[ou]が母音の boldは「勇敢な」。

(Bold には もう一つフォントが「太字の」というビジネスでよく使う意味もある。)

He's so bald. と 勇敢さをほめてしまうと、シャレにならない!

残念(?)なことに、日本人にとって[ou] bold のほうが発音しやすい。


一方 [ɔ:] bald のほうは意識して発音しないと、
ついつい[ou] bold に聞こえがちなので、注意。

発音のコツ

[ɔ:] 日本語の「ア」の大きさに口をあけ、日本語の「オ」を発音する。
「オ」を発音するのに使う喉の部分に力をいれる感じだ。

[ou] 日本語の「オ」を強めに(←声を大きくというより、息をより多く、より早く出す)言って、その勢いでオマケに「ウ」がくっつく感じ。

では、いくつか聞いてみよう。


ペアのうちの最初の単語は[ɔ:] 、二つ目は[ou] を使う。
単語の意味の勘違いがないか洗い出そう。

じっくり聞いたら、自分でも発音してみよう。

00:00 / 00:39

[単語の意味]

caught-coat

coat は「外套」のコート。
動詞で「コーティングする、外面を覆う」の意味も。

called- cold 

野球の「コールドゲーム」はどっちでしょう?
雨が降ってきて寒いからやめるって??

law-low

弁護士のことを lowyer と言わないように。 あえて言えば lowyer より
liar のほうが音は似ている。弁護士に恨みはないが。

ball-bowl 

bowlは「料理用のボウル、ボーリングのボウル」。

hall-whole/hole

hall はコンサートなどのホール。廊下。

raw-row

rawは「生の、原料のままの、粗野な」。
row は名詞で「列、(エクセルなどのスプレッドシートの)行」。
動詞で(ボートを)こぐ」。

in a row (一列に並んで、立て続けに)と in the raw (口語で「裸の」)
も紛らわしいので注意。

baught-boat

では、この一連の単語をランダムに言うので、書き出してみよう。
けっこう手ごわいかも知れない。R, L の聞き分けで詰まっても気にしないでいい。

00:00 / 00:38

[答え]


cold, hall, whole, row, caught, boat, bald,
law, low, bowl, coat, bold, raw, called

文字を見ながら、サンプル音声の前に自分で発音してみて サンプル音声と比べてみよう。自分の中で明確に区別して発音することがポイントだ。

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